静かに息をする地味なレズビアンたちへ

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一人と一人の暮らし【地方で生きるレズビアン*3】

もし貴女に彼女がいて、仕事や学業の関係があり、どうしても地方で2人暮らしをしないといけなくなった時の話をしよう。

まだ法律的に同性婚はできないため、“友達とルームシェア”という形にしてアパートを契約することになる。

役所への転入の手続きは、それぞれが世帯主になり、同じ住所に1人と1人が住んでいるという形で住民登録をすることになる(2人で1つの住民票(一方が世帯主、一方が“同居人”)にすることも可能ではあるが、住民票の写しなどから同棲していることがバレるので、それぞれが世帯主になる形をとった方が無難である)。

一人と一人の暮らし

・ヨソ者がやってきた

ノンケであろうとなかろうと、その地域に昔から住んでいる住民にとって貴女は“ヨソ者”だ。

「女2人でルームシェアってなんだべか?」

といったところだろう。

地方によって状況は異なるが、田舎であればある程その傾向は強くなる。

住むのがアパートでなければ、引っ越し後、近所にご挨拶周りが暗黙の了解になっている地域もあるので、適当に近所を回っておいた方が無難だ。

「2人とも〇〇会社に転勤になりましたので、友人2人で2人住まいをしています」

近所への体裁としては上記の設定にしておけば問題ない。

あとは、地味なレズビアンの貴女たちが道端でイチャイチャすることはないだろうが、部屋の外ではお互いの言動に気を付けて行動すること。

田舎の住民の監視力と拡散力をナメてはいけない。

・役所、病院、警察等は全て地元の人間で構成されている

田舎の人間にとっての“成功者”とは、朝に出勤して、夕方に帰ってこれるような公的な仕事に就くことを指している。

つまり、貴女たち2人が引っ越した地方の役所、病院、警察はほぼほの地元の人間で構成されていると思っていていいだろう。

勿論、彼らには勤務上の守秘義務がある。

しかし、守秘義務というモノをどこまで信用できるだろうか?

気が緩んで家族にポロっとこぼしてしまったのを聞かれたら?

地元の飲食店で仕事の話を同僚としていたのを他の客に聞かれていたら?

彼らには守秘義務がある。けれど、それを聞いた人には守秘義務はない。

「秘密の話なんだけどね?あそこに住んでいる〇〇さん2人って……」と、よく伝わる秘密の話になってしまうこともある。


例えば貴女が急な病気で救急車で搬送されたとする。

貴女の彼女がずっと付きっきりで看病していたら、病院関係者はどのように思うだろう?

貴女が自分の緊急連絡先を同棲している彼女にするようにゴネたら(現状の多くは家族にするようになっている)、病院関係者はどう思うだろう?

思いもしない所からモレる情報が噂になり、好奇の目になる。

例え同性婚が認められたとしてもしばらく偏見が消えることはないだろうが、まだ法律で守られていない関係である貴女たちは、特に周囲に対する警戒が必要である。

・一人と一人の暮らしの準備

法律で守られていないのなら、貴女たちには現状への対策と準備が必要だ。

パっと思いつくのは以下のとおり。

・お互いの家族、もしくは血縁者とそれなりに仲良くしておく(緊急の時の対応)

・LGBT関係の情報やライフハックを積極的に収集する(同じセクシュアリティの方が行っている工夫を日常に取り入れよう)

・健康に気を付けて過ごそう(緊急事態を作らないように)

・ネット上で構わないので、同じセクシュアリティの友人を作っておく(孤独にならないように)

また、もし可能であれば早めに都会に戻ることができるよう、会社であれば上司に掛け合ってみても良いかもしれない。

まとめ

ここまで読んでいて、貴女はとても悔しいだろう。つらいだろう。「なんで私たちが!?」と怒りが沸いてくるだろう。

けれど、貴女たち1人と1人では世直しは出来ないのだ。現状を変えたいのなら、人を集めて行動にうつさないといけない。

今までもこれからもNPO法人、支援団体、色々な方々が戦っている。もし、貴女に勇気があるのなら、それらの活動に参加してみてもよいだろう。

一人で戦ってはいけない。そもそも、一人ではない。

けれど、今日明日に現状が変わることはありえない。

少し大変にはなるが、備えをしておこう。

いつか、貴女たち一人と一人が家族となれる日は絶対に来る。絶対にだ。


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